こんにちは!
「太平洋3DプリンターLab」を運営している、藤川太平洋です😊
今回は3Dプリンターで使われる主要素材である、
ABS
について解説していきます!
ABSは、家電の外装や日用品、おもちゃなどにも使われている、身近なプラスチック素材です。
3Dプリンターでは、ケース、固定具、工具、試作品など、ある程度の丈夫さや耐熱性が必要なものに使われています。
一方で、
- 印刷中に反りやすい
- 室温の変化に弱い
- においが出やすい
- 換気や印刷環境に気をつかう
- 開放型のプリンターでは安定しにくい
といった、ABSならではのむずかしさもあります。
「PLAやPETGとは何がちがうの?」
「家庭用の3Dプリンターでも使える?」
「初心者が選んでも大丈夫?」
今回は、ABSの特徴やメリット、苦手なこと、向いている使い道などを、はじめて使う方にもわかりやすく紹介していきます!🙌
ABSは、丈夫で熱にも比較的強い素材!
ABSは、「アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン」という3つの成分から作られる樹脂です。
名前だけを見ると、「むずかしい!」となりますよね😂
使ううえで、むずかしい化学の知識まで覚える必要はありません。
初心者向けにかなりかんたんに言うと、
丈夫さ、ねばり、耐熱性をあわせ持つプラスチック素材
と考えるとわかりやすいです。
ABSは3Dプリンター専用の素材ではありません。
身のまわりでは、
- 家電の外装
- パソコンや機器のケース
- おもちゃ
- 文房具
- 収納用品
- 自動車まわりの一部部品
など、さまざまな製品に使われています。
そのため、
「ABSという名前は知らなかったけど、じつは何度もさわっていた!」
という方も多いと思います😊
ABSは硬さとねばりを持っている
ABSで作ったものは、基本的には硬く、形をしっかり保ちます。
ただし、PLAのように硬くて割れやすいだけではなく、ある程度のねばりも持っています。
強い力がかかったときに、少し変形しながら力をにがせることがあるため、
- 着け外しをする部品
- はめ込み式のパーツ
- ケース
- 固定具
- 工具
- 試作品
などに使われています。
もちろん、
「ABSなら何を作っても壊れない!」
というわけではありません。
造形物の形、厚さ、印刷する向き、内部の密度などによって、強さは大きく変わります。
それでも、ある程度の力がかかる実用品を作るときには、候補になりやすい素材です。
ABSのメリット
PLAより熱に強い傾向がある
ABSの大きなメリットのひとつが、耐熱性です。
一般的なPLAとくらべると、ABSは高い温度でも形を保ちやすい傾向があります。
そのため、
- 電子機器のケース
- 機械の近くで使う部品
- 温度が上がりやすい場所のカバー
- 熱を持つ機器の周辺部品
- 日が当たりやすい場所で使う小物
などに使われることがあります。
PLAで作ったものは、夏場の車内などでやわらかくなり、形が変わることがあります。
ABSでも高温なら変形する可能性はありますが、PLAよりは耐えやすい場合があります。
ただし、
ABSなら高温になる場所でも必ず安全
という意味ではありません。
使う商品の性能や、実際に置く場所の温度を確認することが大切です。
火の近くや、大きな事故につながる部品には、十分な確認なしで使わないようにしましょう。
衝撃を受けても割れにくい
ABSは、硬さだけでなく、ねばりも持っています。
強い力を受けたときに、すぐパキッと折れるのではなく、少し変形して力をにがせることがあります。
そのため、
- 工具の持ち手
- 機器のケース
- 固定具
- ホルダー
- 留め具
- 着け外しをするパーツ
などに向いています。
落としたり、ぶつけたりする可能性があるものでは、ABSの丈夫さが役立つことがあります。
ただし、細い突起や薄い部品は、ABSでも折れる場合があります。
材料だけにたよらず、形そのものを丈夫にすることも大切です。
切ったり削ったりしやすい
ABSは、印刷したあとの加工がしやすい素材です。
たとえば、
- ヤスリで削る
- 穴を広げる
- パーツを切る
- 接着する
- 塗装する
- 表面を整える
といった作業ができます。
試作品を印刷したあとに、
「この穴を少しだけ広げたい」
「角をもう少し丸くしたい」
「表面をきれいに整えたい」
ということがありますよね。
ABSは、こうした手直しをしながら仕上げる使い方とも相性がよい素材です。
表面をなめらかにする方法がある
ABSには、特定の薬品を使って表面をなめらかにする方法があります。
FDM方式の3Dプリンターでは、材料を一層ずつ積み重ねるため、表面に細かな線が残ります。
ABSでは、この表面を少しずつ溶かし、積み重ねた線を目立ちにくくする加工が行われることがあります。
うまく加工できると、光沢のある、なめらかな見た目に仕上げられます。
ただし、この方法には、
- 火気への注意
- 十分な換気
- 保護具
- 薬品に対応した容器
- 正しい保管と処理
などが必要です。
薬品の使い方をまちがえると、火災や体調不良につながるおそれがあります。
初心者が自己流で気軽に試すものではありません。
まずはヤスリがけや下地処理など、安全に行いやすい方法から始めるのがおすすめです。
塗装や仕上げにも使いやすい
ABSは、塗装を前提としたものにも使えます。
印刷したあとに、
- ヤスリがけ
- パテ埋め
- 下地の塗装
- 本番の塗装
- つやの調整
などを行うことで、見た目を整えられます。
ケースや模型、展示用の部品など、見た目を仕上げたいものにも使いやすいです。
ただし、塗料や下地材との相性は商品によって変わります。
いきなり完成品へ使わず、あまった材料や小さな試作品で確認すると安心です。
ABSのデメリット
ABSには便利な特徴がありますが、印刷のしやすさではPLAやPETGに負けることがあります。
とくに、温度の管理がうまくできないと、印刷に失敗しやすい素材です。
印刷中に反りやすい
ABSでよく起こる問題が、造形物の反りです。
ABSは、熱でやわらかくなったあと、冷えて固まるときに縮みます。
造形物の場所によって冷える速さがちがうと、端が上へ持ち上がったり、全体がゆがんだりすることがあります。
印刷のはじめは順調に見えても、しばらくすると、
「あれ? 角が浮いてきている……」
ということがあります😇
反りが大きくなると、
- プレートからはがれる
- 底面が曲がる
- 寸法が合わなくなる
- ノズルが造形物へぶつかる
- 印刷が途中で失敗する
といった問題につながります。
ABSを印刷するときは、造形物を急に冷やさないことが大切です。
開放型のプリンターでは安定しにくい
ABSは、印刷中の温度を安定させる必要があります。
まわりの空気が冷たかったり、エアコンや扇風機の風が当たったりすると、造形物が急に冷えて反りやすくなります。
そのため、ABSではプリンターのまわりを箱のように囲い、内部の温度を保つことがあります。
この囲いは、
エンクロージャー
と呼ばれます。
エンクロージャーがあると、外からの風を防ぎ、印刷中の温度を安定させやすくなります。
ただし、プリンターによっては、あとから囲うことで本体や電子部品へ熱がこもる場合があります。
自作の箱で安易に囲うのではなく、プリンターの説明やメーカーの案内を確認しましょう。
印刷中ににおいが出やすい
ABSは、印刷中に独特のにおいを感じることがあります。
また、においが気になるだけでなく、印刷中には空気中へ成分が出ることがあります。
そのため、ABSを使うときは、
- 十分に換気する
- 人が長く過ごす部屋をさける
- 寝室で使わない
- 子どもやペットが近づかないようにする
- メーカーの注意事項を守る
- 必要に応じて排気やフィルターを用意する
といった対策が大切です。
プリンター本体だけでなく、置き場所や換気の方法まで考えてから使いましょう。
印刷温度が高め
ABSは、PLAよりも高いノズル温度やプレート温度を必要とする商品が多いです。
そのため、プリンターによってはABSへ対応できない場合があります。
たとえば、
- ノズルの温度が足りない
- プレートの温度が上がらない
- 高温に対応した部品が使われていない
- 本体を囲えない
- 安全に換気できない
といった場合です。
フィラメントを買う前に、使っているプリンターがABSへ対応しているか、必ず確認しましょう。
大きな造形物ほどむずかしくなる
ABSは、印刷するものが大きくなるほど、反りやひび割れが起こりやすくなります。
小さな部品では問題なくても、大きなケースを印刷すると、角が浮いたり、途中の層が割れたりすることがあります。
大きなものを作る場合は、
- パーツを小さく分ける
- 壁の厚さを見直す
- 印刷する向きを変える
- プレートへの定着を強める
- 周りの温度を安定させる
といった工夫が必要です。
ABSでは何を作れるの?
ABSは、丈夫さや耐熱性、加工のしやすさを活かした実用品に向いています。
代表的な使い道を見ていきましょう。
電子機器のケースやカバー
ABSは、機器を守るケースやカバーに使われます。
たとえば、
- 小型パソコンのケース
- 基板のカバー
- センサーのケース
- 電池ボックス
- スイッチの外装
- 配線を守る部品
などです。
PLAより熱に強い傾向があるため、少し温度が上がる機器のまわりでも使いやすい場合があります。
ただし、ケースの中へ熱がこもると、機器そのものが故障することがあります。
通気口や内部の空間も考えて設計しましょう。
工具や作業用の部品
ABSは、作業を助ける工具や治具にも活用できます。
たとえば、
- 穴あけ用のガイド
- 部品を固定する治具
- 工具の持ち手
- 位置を合わせるパーツ
- 塗装用の持ち手
- 収納用のホルダー
などです。
作ったあとに削ったり、穴を広げたりしやすいため、実際に使いながら手直しできます。
固定具や取りつけ用のパーツ
ある程度の丈夫さが必要な、
- ブラケット
- クランプ
- スペーサー
- 留め具
- フック
- カメラやセンサーの台
などにも使えます。
少しねばりがあるため、着け外しをする部品にも向いています。
ただし、人の体重を支えるものや、落下すると危険なものには、十分な確認なしで使わないようにしましょう。
車内で使う小物
ABSは、PLAよりも熱に強いため、車内用の小物に使われることがあります。
たとえば、
- 小物を置くトレー
- ケーブルホルダー
- スイッチまわりのカバー
- 収納用の仕切り
- 軽いものを支える固定具
などです。
ただし、真夏の車内は非常に高温になります。
ABSでも変形する可能性があるため、
「ABSなら車内で何に使っても大丈夫!」
とは考えないようにしましょう。
運転や安全にかかわる部品には使用せず、実際の温度や使い方をよく確認する必要があります。
おもちゃや模型
ABSは、おもちゃや模型にも使えます。
たとえば、
- 動かして遊ぶ部品
- 組み立て式の模型
- 車輪や接続パーツ
- ロボットの外装
などです。
加工や塗装がしやすいため、印刷したあとに仕上げる作品にも向いています。
ただし、小さな子どもが使うものでは、部品の破損や誤飲にも注意が必要です。
ABSを印刷するときに必要な環境
ABSを使うときは、フィラメントだけでなく、印刷する環境も大切です。
最低限、次の点を確認しましょう。
- プリンターがABSへ対応している
- 必要なノズル温度まで上げられる
- プレートを十分に温められる
- 印刷中の温度を安定させられる
- 外からの風を防げる
- 安全に換気できる
- 人が長く過ごす場所から離せる
ABSは、机の上へプリンターを置くだけで気軽に使える素材とは言いにくいです。
とくに、リビングや寝室など、生活する場所で長時間印刷する場合は注意が必要です。
プリンターの説明やフィラメントの注意事項を読み、安全に使える場所を用意しましょう。
ABSを印刷するときの基本的なポイント
ABSの設定は、メーカーや商品によって変わります。
まずは、フィラメントに書かれている推奨設定や、プリンターに用意されたABS用の設定を使いましょう。
確認したい項目は、次のとおりです。
- ノズル温度
- プレート温度
- 印刷速度
- 冷却ファン
- プレートへの定着方法
- 印刷する場所の温度
ABSでは、造形物を急に冷やさないことが大切です。
冷却ファンを強く使うと、反りやひび割れが起こる場合があります。
ただし、細かな形を出すために、部分的な冷却が必要になることもあります。
最初から大きく設定を変えるのではなく、
メーカーの設定で試す → 失敗の様子を見る → 少しずつ直す
という流れがおすすめです。
一度にたくさんの設定を変えると、
「何が原因だったのかわからない……!」
となります😂
温度、速度、冷却などを、ひとつずつ確認していきましょう。
ABSも湿気対策が必要?
ABSも、空気中の水分を吸うことがあります。
湿気を吸ったABSを使うと、
- 表面が荒れる
- 小さな穴ができる
- 糸引きが増える
- ノズルから出る量が安定しない
- 印刷中にパチパチと音がする
- 造形物の強さが落ちる
といった問題が起こる場合があります。
ABSの印刷では、反りや温度ばかりに目が向きがちです。
しかし、うまく印刷できない原因が、フィラメントの湿気だったということもあります。
開封後は、
- 密閉袋へ入れる
- 乾燥剤といっしょに保管する
- 密閉ケースを使う
- 必要に応じて乾燥機を使う
といった方法で、湿気をさけて保管しましょう。
ABSを買うときに確認したいこと
ABSを買う前には、次の点を確認しましょう。
- プリンターがABSへ対応しているか
- 必要なノズル温度へ上げられるか
- プレートを十分に温められるか
- プリンターを囲えるか
- 安全に換気できるか
- フィラメントの太さが合っているか
- 欲しい色や仕上がりか
- 作りたいものにABSが合っているか
とくに大切なのは、プリンターと作業環境です。
ABSのフィラメントだけを買っても、温度を安定させられなければ、うまく印刷できないことがあります。
開放型のプリンターでABSを使う場合は、メーカーが対応を案内しているか確認しましょう。
また、ABSには、
- 高速印刷向け
- 低反りをうたうもの
- 強さを高めたもの
- 難燃性を持たせたもの
- 特殊な材料を加えたもの
などがあります。
特殊なABSでは、必要な温度やノズルが変わる場合があります。
はじめて使う場合は、まず標準的なABSから試すとわかりやすいと思います。
ABSは初心者におすすめ?
ABSは、3Dプリンターを買ったばかりの方が、最初に選ぶ素材としては少しむずかしいと思います。
理由は、
- 温度管理が必要
- 反りが起こりやすい
- 印刷中のにおいへ注意が必要
- 換気できる場所が必要
- プリンターを囲う必要がある場合が多い
- 印刷に失敗した原因を見分けにくい
といった点です。
まずはPLAで基本の印刷に慣れ、次にPETGなどを試してからABSへ進むと、違いを理解しやすくなります。
ただし、
「作りたいものにABSの耐熱性が必要」
「使っているプリンターがABS向けに作られている」
「換気や温度管理ができる」
という条件がそろっているなら、最初からABSへ挑戦することもできます。
重要なのは、素材の名前だけで選ばず、プリンターと作業環境まで確認することです。
ABSが向いている人
ABSは、次のような方に向いています。
- PLAより熱に強いものを作りたい
- ケースや機器の外装を作りたい
- 丈夫な固定具や工具を作りたい
- 印刷後に削ったり加工したりしたい
- 塗装を前提とした部品を作りたい
- プリンターを囲える環境がある
- 安全に換気できる場所がある
- 反りをおさえるための調整ができる
一方で、
- はじめてフィラメントを使う
- 開放型のプリンターしかない
- リビングや寝室で印刷する
- 換気できる場所がない
- 手軽に印刷したい
- 大きな造形物を安定して作りたい
という場合は、PLAやPETGなど、別の素材のほうが使いやすいことがあります。
まとめ:ABSは耐熱性と加工性にすぐれた素材!
ABSは、丈夫さ、ねばり、耐熱性を持つフィラメントです。
主な特徴をまとめると、
- PLAより熱に強い傾向がある
- 衝撃を受けても割れにくい
- ケースや固定具などの実用品に向いている
- 削る、切る、接着するなどの加工がしやすい
- 塗装や表面処理にも使える
- 印刷中に反りやすい
- 温度を安定させる必要がある
- においが出やすく、換気が大切
- 開放型のプリンターでは安定しにくい
- PLAやPETGより印刷の難易度が高い
という素材です。
ABSは、初心者が気軽に使える素材とは言いにくいかもしれません。
しかし、印刷できる環境を用意し、反りや温度をうまく管理できれば、実用品づくりで頼りになる素材です。
ABSがすごいから使うのではなく、ABSの特徴が必要なものに使う。
この考え方で選ぶと、素材の良さを活かしやすくなります😊
最後に
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
ABSは、ケース、工具、固定具、機器の外装など、丈夫さや耐熱性が必要なものに使えるフィラメントです。
一方で、反りやすさ、印刷中のにおい、温度管理など、使う前に知っておきたい注意点もあります。
まずは使っているプリンターがABSに対応しているかを確認し、換気や印刷環境をしっかり整えてから試してみてください!
このサイトでは、3Dプリンター本体、フィラメント、工具、塗装、メンテナンス、印刷時のトラブルなど、3Dプリンターに関する記事を掲載しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!🙌✨
