こんにちは!
「太平洋3DプリンターLab」を運営している、藤川太平洋です😊
3Dプリンターの設定を見ていると、
インフィル
という言葉が出てきます。
スライサー(3Dモデルを印刷用のデータへ変えるソフト)によっては、
- 充填
- 内部充填
- 充填密度
- Infill
などと書かれていることもあります。
さらに、設定画面には、
10%
15%
30%
100%
といった数字や、
グリッド
ジャイロイド
ハニカム
といった名前も並んでいます。
「数字が大きいほど丈夫になるの?」
「中身は100%つめたほうがいい?」
「パターンによって何が変わるの?」
と迷ってしまいますよね。
インフィルは、造形物の内側へ作られる構造です。
材料の使用量や印刷時間、重さ、丈夫さなどに関わる大切な設定ですが、数字を大きくすれば必ずよくなるわけではありません。
今回は、インフィルの役目や密度、代表的なパターン、選び方について、初心者向けに紹介していきます!🙌
インフィルは造形物の内側に作る構造
インフィルとは、
造形物の内側を支えるために作られる構造
のことです。
FDM方式(フィラメントを熱でやわらかくし、一層ずつ重ねる方式)では、造形物の中身をすべて材料でうめるとは限りません。
外側に壁を作り、その内側へ網目や格子のような構造を入れます。
この内側の構造がインフィルです。
たとえば、見た目は同じ立方体でも、中身は次のように変えられます。
- ほとんど空洞にする
- 内側へ少しだけ構造を入れる
- 網目を細かくする
- 中まで材料でうめる
完成したあと、インフィルは外からほとんど見えません。
しかし、造形物の内側では、上の面を支えたり、外から受けた力を分けたりする役目を持っています。
インフィルは上の面を下から支えている
インフィルの大切な役目のひとつが、造形物の上側を支えることです。
3Dプリンターは、何もない空中へ材料をきれいに置き続けることが苦手です。
中身が大きな空洞になっていると、最後に上面を閉じるとき、フィラメントを空中へ渡す必要があります。
空中へ材料を橋のように渡す印刷は、
ブリッジ
と呼ばれます。
短い距離であれば、ブリッジだけでも印刷できます。
しかし、空洞が広すぎると、
- 上面がたれる
- 表面に穴ができる
- 線がばらける
- 上面がでこぼこする
といった問題が起こります。
インフィルがあれば、上面を印刷するときの足場になります。
つまり、インフィルは丈夫さを上げるだけでなく、
造形物の上面をきれいに作るための支え
としても使われています。
インフィル密度は内側をうめる割合
インフィルの設定でよく見る「15%」や「30%」という数字は、
インフィル密度
を表しています。
インフィル密度とは、造形物の内側をどのくらいの割合でうめるかを示す設定です。
スライサーによっては、
- 充填率
- 充填密度
- Sparse infill density
などと書かれています。
数字が小さいほど内部のすき間が広くなり、数字が大きいほど内部の構造が細かくなります。
| インフィル密度 | おもな特徴 |
|---|---|
| 0% | 内部の構造を作らない |
| 10~15%前後 | 材料と時間をおさえやすい |
| 20~30%前後 | 実用品にも使いやすい |
| 40%以上 | 圧力や重さに対応したい場合に使う |
| 100% | 内部までほぼ材料でうめる |
ただし、同じ密度でも、造形物の形やインフィルのパターンによって結果は変わります。
そのため、
「15%なら必ずこの強さになる」
と考えることはできません。
密度を高くするとどうなる?
インフィル密度を高くすると、造形物の内側へ多くの材料が入ります。
メリット
- 上面をしっかり支えやすい
- 押しつぶす力に強くなりやすい
- 造形物が重くなる
- 内側の空洞を減らせる
- ネジや部品を入れる場所を支えやすくなる
デメリット
- フィラメントを多く使う
- 印刷時間が長くなる
- 完成品が重くなる
- 材料の縮みによるゆがみが起こることがある
- 密度を上げても、思ったほど強くならない場合がある
インフィルを100%へ近づけるほど、材料と印刷時間は増えていきます。
しかし、密度を2倍にしたからといって、造形物の強さまで必ず2倍になるわけではありません。
密度を低くするとどうなる?
インフィル密度を低くすると、造形物の内側に広い空間ができます。
メリット
- フィラメントを節約できる
- 印刷時間を短くしやすい
- 造形物を軽くできる
- 大きな試作品を作りやすい
デメリット
- 上面を支えにくくなる
- 押しつぶす力に弱くなりやすい
- 大きな平面がたれる場合がある
- 壁がうすいと壊れやすくなる
- 内部へネジなどを入れにくくなる
見た目や大きさを確認するための試作品なら、低い密度でも十分なことがあります。
一方で、上から重さがかかる部品や、ネジをしめる部品では、密度だけでなく形や壁の厚さも考える必要があります。
丈夫さはインフィルだけでは決まらない
丈夫なものを作りたいとき、
「インフィルを100%にすれば安心!」
と考えたくなります。
しかし、造形物の強さはインフィルだけで決まりません。
とくに大切なのが、
外壁
です。
外壁とは、造形物の外側を囲む部分です。
スライサーによっては、
- 壁
- 周囲
- 外周
- Perimeter
- Wall loop
などと書かれています。
インフィルが造形物の内側にある骨組みなら、外壁は形そのものを囲う殻のような部分です。
造形物へ横から力がかかる場合は、インフィル密度を上げるよりも、外壁の数や厚さを増やしたほうが効果的なことがあります。
丈夫さには、ほかにも、
- フィラメントの種類
- 外壁の厚さ
- 上面と底面の厚さ
- 印刷する向き
- 積層ピッチ
- ノズル温度
- 造形物そのものの形
などが関係します。
そのため、強くしたいからといって、インフィルだけを大きく変えるのはおすすめできません。
迷ったら10~20%前後から試そう
インフィル密度には、すべての造形物に使える正解はありません。
作るものに合わせて変える必要があります。
見た目を確認する試作品
大きさや形を確認するだけなら、
5~10%前後
でも足りる場合があります。
印刷時間と材料をおさえやすく、データを直して何度も印刷するときに向いています。
飾るものや軽い小物
大きな力がかからないものなら、
10~15%前後
から試しやすいです。
上面を支えられる範囲で、材料と時間をおさえられます。
収納用品や一般的な実用品
小物入れ、スタンド、ケースなどでは、
15~25%前後
が候補になります。
ただし、実際に必要な強さは形や使い方によって変わります。
重さや力がかかる部品
押されたり、部品を支えたりするものでは、
25~40%前後
を使うことがあります。
ただし、インフィルを増やす前に、外壁の厚さや印刷する向きも確認しましょう。
100%のインフィルは、特別な理由がある場合に使う設定です。
日用品や一般的な試作品では、100%までうめる必要がないことが多いです。
インフィルには形のちがいもある
インフィルは、密度だけでなく、内側へ作る形も選べます。
この形は、
インフィルパターン
と呼ばれます。
スライサーには、さまざまなパターンが用意されています。
パターンによって、
- 印刷時間
- 材料の使用量
- 力を受ける方向
- 上面の支えやすさ
- 柔らかさ
などが変わります。
ここでは、よく使われるものを紹介します。
グリッド
グリッドは、線をたてと横へ重ねた、格子のようなパターンです。
見た目がわかりやすく、さまざまなスライサーに用意されています。
メリット
- 上面を支えやすい
- 複数の方向からの力に対応しやすい
- わかりやすい形をしている
- 比較的速く印刷できる
注意点
グリッドでは、同じ層の中で線が交差します。
交差する場所には材料が重なりやすく、印刷中にノズルが当たることがあります。
「印刷中にカリカリと音がする」
という場合は、ノズルが交差部分へふれている可能性があります。
問題が起きる場合は、別のパターンへ変える方法があります。
ジャイロイド
ジャイロイドは、曲線がうねるようにつながった、立体的なパターンです。
上下だけでなく、さまざまな方向へ構造が続いています。
メリット
- 複数の方向からの力に対応しやすい
- 同じ層の中で線が交差しにくい
- 丈夫さと材料のバランスを取りやすい
- 柔らかい材料にも使われることがある
見た目は少し複雑ですが、幅広い用途に使いやすいパターンです。
「どのパターンを使うか迷う」
という場合の候補になります。
ただし、形によっては直線だけのパターンより印刷時間が長くなることがあります。
レクトリニア
レクトリニアは、一つの層へ同じ向きの線を並べ、次の層では向きを変えるパターンです。
スライサーによっては、
- 直線
- 直線状
- Rectilinear
などと書かれています。
メリット
- 比較的速く印刷できる
- 材料をおさえやすい
- 線の交差による材料の盛り上がりが少ない
- 一般的な造形物に使いやすい
試作品や、特別な強さを必要としない小物へ使いやすいパターンです。
ハニカム
ハニカムは、ハチの巣のような六角形を並べるパターンです。
見た目にもわかりやすく、丈夫そうな印象があります。
メリット
- 内部をしっかり支えやすい
- 力を分けやすい
- 線が同じ場所で重なりにくい
デメリット
- 印刷時間が長くなりやすい
- 材料を多く使う場合がある
- 形を作るための動きが多い
丈夫さだけでなく、印刷時間や材料も確認して選びましょう。
ライトニング
ライトニングは、雷や木の枝のような形で、上面を支える場所へ向かって伸びるパターンです。
造形物の中を均等にうめるのではなく、上面を支えるために必要な場所を中心に作られます。
メリット
- フィラメントを大きく節約しやすい
- 造形物を軽くできる
- 大きな飾りや試作品に向いている
- 印刷時間をおさえやすい
デメリット
- 丈夫さを上げる目的には向かない
- 押しつぶす力には弱くなりやすい
- ネジや部品を入れる場所には使いにくい
見た目を重視する大きな造形物や、内部の丈夫さがあまり必要ないものに向いています
0%なら完全な空洞になる?
インフィル密度を0%にすると、網目状のインフィルは作られません。
ただし、造形物のすべてがなくなるわけではありません。
外壁、上面、底面は、別の設定として作られます。
そのため、0%でも外側の形は印刷できます。
ただし、上面が広い造形物では、下から支えるインフィルがないため、きれいに閉じられないことがあります。
0%を使いやすいのは、
- 上へ向かって少しずつ閉じる形
- 上面がない容器
- 花びんのような形
- 見た目を確認する試作品
などです。
広くて平らな天井がある形では、少しインフィルを入れたほうが安心です。
100%なら必ず一番丈夫になる?
100%のインフィルでは、造形物の内部までほぼ材料でうめます。
重く、かたくなりやすい一方で、
- 材料を大量に使う
- 印刷時間が長くなる
- 内部に熱がこもりやすい
- 材料の縮みでゆがむことがある
- 外壁との境目が表面に出ることがある
といった問題もあります。
また、外から引っぱる力や曲げる力に対しては、外壁を増やしたほうが効果的な場合があります。
100%は、
- 重さを持たせたい
- 内部へ穴をあけたい
- 圧縮する力がかかる
- 特定の場所へ部品を入れる
といった理由がある場合に使いましょう。
何となく丈夫そうだからという理由だけで、すべてを100%にする必要はありません。
場所によって密度を変える方法もある
造形物のすべてを同じインフィル密度にする必要はありません。
スライサーによっては、特定の場所だけ設定を変えられます。
たとえば、
- ネジを入れる場所だけ密度を高くする
- 力がかかる部分だけ外壁を増やす
- 中央の広い部分は密度を低くする
- 上面に近い部分だけ細かくする
といった調整ができます。
このように、一部だけ設定を変えるための形は、
モディファイア
などと呼ばれます。
モディファイアとは、造形物の一部へ別の設定を当てるための領域です。
全体の密度を高くするよりも、材料と時間をおさえながら、必要な場所だけを丈夫にできます。
初心者のうちは使わなくても問題ありません。
標準設定に慣れてから、必要に応じて試してみましょう。
光造形方式ではインフィルを使う?
液体のレジンを光で固める光造形方式では、FDM方式のような網目状のインフィルを使わないことが一般的です。
光造形では、3Dモデルをそのまま印刷すると、中までレジンでうまった状態になることがあります。
材料を減らしたい場合は、インフィルを設定するのではなく、
中空化
を行います。
中空化とは、造形物の内側を空洞にし、外側へ一定の厚さの壁を残すことです。
中空にすると、
- レジンの使用量を減らせる
- 完成品を軽くできる
- 大きな造形物を作りやすくなる
というメリットがあります。
ただし、中へ液体のレジンが残らないように、
排液穴
を作る必要があります。
排液穴とは、中に残ったレジンや洗浄液を外へ出すための穴です。
穴が足りない場合は、
- 内部へレジンが残る
- 洗浄しきれない
- あとから造形物が割れる
- 内部から液体がもれる
といった問題につながる可能性があります。
また、外側に残す壁がうすすぎると、造形物が壊れやすくなります。
光造形では、
インフィル密度より、中空化・壁の厚さ・排液穴を考える
と覚えておくとわかりやすいです。
迷ったら標準設定から始めよう
インフィルは、数字やパターンの種類が多いため、最初からすべてを調整する必要はありません。
FDM方式では、次の流れで試すとわかりやすいです。
- まず10~20%前後の標準設定を使う
- 一般的なグリッドやジャイロイドを選ぶ
- 印刷時間と材料の量を確認する
- 完成品の強さや上面を見る
- 必要な場合だけ密度や外壁を増やす
丈夫さが足りない場合も、すぐにインフィルを100%へ上げるのではなく、
- 外壁を増やす
- 印刷する向きを変える
- 造形物の形を見直す
- フィラメントを変える
といった方法も確認しましょう。
一度にたくさんの設定を変えると、
「何を変えたから丈夫になったのかわからない!」
となります😇
まずは標準設定を基準に、ひとつずつ変えていくのがおすすめです。
まとめ:インフィルは造形物の内側を支える構造
インフィルとは、FDM方式で造形物の内側へ作られる構造です。
おもなポイントをまとめると、
- 上面を下から支える
- 造形物の丈夫さや重さに関わる
- 密度を上げると材料と時間も増える
- 低い密度では軽く、速く印刷しやすい
- 丈夫さはインフィルだけでは決まらない
- 外壁の厚さや印刷する向きも大切
- パターンによって速さや力の受け方が変わる
- 一般的な造形物では10~20%前後から試しやすい
- 100%がいつでも一番よいわけではない
- 光造形ではインフィルより中空化を使うことが多い
という設定です。
迷った場合は、スライサーに用意された標準の密度とパターンから始めてみましょう。
実際に印刷したものを使い、必要な丈夫さや重さを確認しながら調整すると、インフィルのちがいを理解しやすくなります😊
最後に
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
インフィルは、外から見えない部分ですが、造形物の仕上がりや印刷時間、材料の量に関わる大切な設定です。
数字を大きくすればよいのではなく、
何を作り、どのように使うのか
に合わせて選ぶことが大切です。
まずは標準設定から始め、必要に応じて密度やパターンを変えてみてください!
このサイトでは、3Dプリンターの設定や専門用語について、初心者向けにわかりやすく紹介しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!🙌✨

