こんにちは!
「太平洋3DプリンターLab」を運営している、藤川太平洋です😊
3Dプリンターについて調べていると、
スライサー
という言葉がよく出てきます。
スライサーとは、かんたんに言うと、
3Dモデルを、3Dプリンターで印刷できるデータへ変えるソフト
です。
3Dプリンターへ3Dモデルをそのまま送っても、基本的には印刷できません。
印刷する前にスライサーを使い、
- どの向きで置くか
- 1層をどれくらいの細かさにするか
- どれくらいの速さで動かすか
- 内部をどのような形にするか
- サポートをどこへ付けるか
- どの温度で材料を出すか
などを決める必要があります。
つまり、スライサーは、
3Dモデルと3Dプリンターをつなぐ、印刷の準備をするソフト
です。
今回は、スライサーの役目、代表的なソフト、それぞれが対応しているプリンターについて、紹介していきます!🙌
スライサーは3Dモデルを印刷用のデータへ変えるソフト
3Dモデルは、立体物の形を表したデータです。
よく使われる形式には、
- STL
- 3MF
- OBJ
などがあります。
これらのデータには、作りたい立体物の形が入っています。
しかし、形のデータだけでは、3Dプリンターはどのように動けばよいのかわかりません。
たとえば、FDM方式(フィラメントを熱でやわらかくし、一層ずつ積み重ねる方式)では、
- ノズルをどこへ動かすか
- どの場所で材料を出すか
- どれくらいの速さで動かすか
- ノズルを何度まで温めるか
- プレートを何度まで温めるか
- 冷却ファンをどれくらい回すか
といった指示が必要です。
スライサーは3Dモデルをうすい層へ分け、その層を作るための動きを計算します。
この作業を、
スライス
と呼びます。
英語の「slice」には、うすく切り分けるという意味があります。
立体物をうすい層へ切り分けるようにして、印刷の手順を作るため、スライサーと呼ばれています。
スライサーと3Dモデリングソフトは別のもの
スライサーは、3Dモデルを作るためのソフトではありません。
3Dモデルそのものを作るソフトは、
3Dモデリングソフト
と呼ばれます。
代表的なものには、
- Blender
- Fusion
- Tinkercad
- FreeCAD
などがあります。
3Dモデリングソフトでは、形を作ったり、寸法を決めたりします。
一方、スライサーでは、完成した3Dモデルを読みこみ、印刷するための設定を行います。
役目を分けると、
- 3Dモデリングソフト:作りたい形を作る
- スライサー:その形を印刷できるように準備する
というちがいがあります。
スライサーでも大きさの変更や、かんたんな切り分けはできます。
ただし、新しい形を一から作るためのソフトではありません。
スライサーでは何を設定できる?
スライサーでは、印刷に関わるさまざまな設定を変えられます。
ソフトによって名前や場所は少しちがいますが、基本的な役目は同じです。
造形物の向きや大きさを決める
3Dモデルを読みこんだら、プレートの上へ置く向きを決めます。
同じ3Dモデルでも、置く向きによって、
- サポートの量
- 表面のきれいさ
- 印刷時間
- 造形物の強さ
- プレートへの付きやすさ
が変わります。
大きさを変えたり、複数のモデルを並べたりすることもできます。
プリンターの造形エリアをこえている場合は、モデルを小さくするか、いくつかの部品へ分ける必要があります。
積層ピッチを決める
積層ピッチとは、3Dプリンターが一度に作る、1層ぶんの高さです。
スライサーによっては、
- レイヤー高さ
- 積層高さ
- Layer Height
と書かれています。
数字を小さくすると、表面の段差が細かくなり、曲面がなめらかに見えやすくなります。
その一方で、作る層の数が増えるため、印刷時間も長くなります。

インフィルを決める
インフィルとは、造形物の内側へ作る構造です。
スライサーでは、
- 内部をどれくらいうめるか
- どのような形で支えるか
を決められます。
内部をうめる割合は、
インフィル密度
と呼ばれます。
密度を上げると材料の量や印刷時間が増え、完成品も重くなります。

外壁や上下面の厚さを決める
造形物の外側を囲う部分は、
外壁
と呼ばれます。
ソフトによっては、
- 壁
- 外周
- Wall
- Perimeter
などと書かれています。
外壁の数や厚さは、完成品の丈夫さに大きく関わります。
造形物の上側と下側を何層でふさぐかも、スライサーで設定できます。
丈夫な実用品を作りたい場合は、インフィルだけでなく、外壁や上下面の厚さも確認しましょう。
サポートを付ける場所を決める
サポートとは、下に何もない部分を印刷するときに、一時的な足場として作る構造です。
スライサーでは、
- サポートを自動で付ける
- 必要な場所だけ手動で付ける
- 付けたくない場所を指定する
- 通常型や木のような形を選ぶ
といった設定ができます。
印刷後は取り外すため、必要以上に増やすと、材料や時間を多く使います。
スライサーの確認画面を見ながら、必要な場所へ付いているかを確認します。

温度や印刷速度を決める
FDM方式では、使うフィラメントに合わせて、
- ノズル温度
- プレート温度
- 印刷速度
- 冷却ファン
- フィラメントを引き戻す設定
などを決めます。
フィラメントを引き戻す動きは、
リトラクション
と呼ばれます。
ノズルが別の場所へ移動するときに、フィラメントを少し戻し、糸引きを減らすための設定です。
PLA、PETG、TPU、ABSでは、合う温度や速度がちがいます。
多くのスライサーには、素材ごとの標準設定が用意されています。
印刷前に動きを確認できる
スライスが終わると、プリンターがどのように動くかを確認できます。
この画面は、
プレビュー
と呼ばれます。
プレビューでは、一層ずつ表示しながら、
- 外壁が正しく作られているか
- インフィルが入っているか
- サポートが必要な場所にあるか
- 空中へ材料を出していないか
- 色の切りかえが正しいか
などを確認できます。
印刷を始める前にプレビューを見ることで、設定のまちがいに気づける場合があります。
さらに、予想される印刷時間や、使う材料の量も表示されます。
スライサーはどれでも使えるわけではない
スライサーは、どの3Dプリンターにも自由に使えるとは限りません。
確認したいのは、
- 使っているプリンターのプロファイルがあるか
- プリンターが読める形式で出力できるか
- 造形サイズやノズルが正しく登録されているか
- ネットワークからデータを送れるか
- 多色印刷などの機能に対応しているか
という点です。
3Dモデルを読みこめるだけでは、対応しているとは言い切れません。
設定が合っていないまま印刷すると、
- プリンターの外へ動こうとする
- 温度が正しく設定されない
- ノズルやプレートがぶつかる
- 多色印刷が正しく動かない
といった問題につながります。
はじめて使う場合は、
プリンターのメーカーが案内しているスライサー
から始めるのが安心です。
FDM方式でよく使われるスライサー
FDM方式では、メーカー純正のソフトと、多くのメーカーへ対応する汎用ソフトがあります。
代表的なスライサーを見ていきましょう。
| スライサー | おもな対応プリンター | おもな特徴 |
|---|---|---|
| Bambu Studio | Bambu Lab A1・A1 mini・P1・X1・H2系など | Bambu Lab機との連携、多色印刷、遠隔操作 |
| UltiMaker Cura | UltiMaker製品、対応プロファイルがある各社FDM機 | 対応機種と設定が多く、利用者も多い |
| PrusaSlicer | Original Prusa製品、CrealityやLulzBotなど一部他社機 | 細かな設定とサポート調整に強い |
| OrcaSlicer | Bambu Lab、Prusa、Creality、Voronなど | 対応機種が広く、調整用の機能が多い |
| Creality Print | CrealityのEnder・K・CR・Hi系など | Creality機との通信や遠隔操作に向く |
| FlashPrint | FlashForgeのFDMプリンター | FlashForge機向けの標準設定が用意されている |
対応する機種は、ソフトの更新によって増えたり、設定が変わったりします。
使いたい機種が一覧に見つからない場合は、最新版のプリンター追加画面やメーカーの案内を確認しましょう。
光造形方式でもスライサーが必要
液体のレジンへ光を当てて固める光造形方式でも、スライサーを使います。
光造形では、3Dモデルをうすい層へ分け、各層のどこへ光を当てるかを示すデータへ変えます。
光造形用のスライサーでは、
- 造形物を置く向き
- サポートの位置や太さ
- 積層ピッチ
- 露光時間
- 中空化
- 排液穴
などを設定します。
露光時間とは、レジンへ1層ごとに光を当てる時間です。
中空化とは、造形物の内側を空洞にして、使うレジンの量を減らす処理です。
排液穴とは、中に残ったレジンや洗浄液を外へ出すための穴です。
FDM方式と光造形方式では、使う材料と印刷のしくみがちがうため、スライサーも分けて考える必要があります。
光造形方式でよく使われるスライサー
代表的な光造形向けスライサーには、次のようなものがあります。
| スライサー | おもな対応プリンター | おもな特徴 |
|---|---|---|
| CHITUBOX | ELEGOO、Anycubic、Phrozenなど、多くの光造形機 | サポート、中空化、穴あけなどの機能が豊富 |
| Lychee Slicer | 多くのメーカーの光造形機、一部のFDM機 | 対応機種が多く、サポート編集がしやすい |
| Photon Workshop | Anycubic Photonシリーズ | Anycubic純正で、Photonシリーズ向け |
| PrusaSlicer | Original Prusaの光造形機など | FDM方式と光造形方式を同じソフトで扱える |
同じメーカーでも、機種によって使えるデータ形式がちがうことがあります。
ソフトの対応一覧に、使っている機種名があるかを確認しましょう。
どのスライサーを選べばいい?
どのスライサーが一番よいかは、使っているプリンターや目的によって変わります。
はじめて3Dプリンターを使う人
まずは、メーカーが案内している純正スライサーがおすすめです。
- Bambu LabならBambu Studio
- CrealityならCreality Print
- FlashForgeならFlashPrint
- Anycubicの光造形ならPhoton Workshop
というように選びます。
プリンターに合った標準設定が用意されており、出力するデータ形式でも迷いにくいためです。
複数メーカーのFDMプリンターを使う人
CuraやOrcaSlicer、PrusaSlicerが候補になります。
ひとつのソフトへ複数のプリンターを登録して、使い分けられます。
ただし、機種ごとのプロファイルが用意されているか確認しましょう。
細かな調整を行いたい人
OrcaSlicerやPrusaSlicerが候補になります。
フィラメントごとの調整や、造形物の一部だけ設定を変える機能などを使えます。
光造形プリンターを使う人
メーカーが案内しているソフトを確認したうえで、CHITUBOXやLychee Slicerを検討します。
光造形では、サポートの付けやすさや、使っている機種のデータ形式に対応しているかが重要です。
スライサーは途中で変えてもいい?
最初に選んだスライサーを、ずっと使い続ける必要はありません。
同じ3Dモデルでも、別のスライサーで印刷用データを作れます。
たとえば、
- 最初はメーカー純正ソフトを使う
- 基本を覚えたらOrcaSlicerを試す
- サポートを細かく調整したいときだけPrusaSlicerを使う
という使い分けもできます。
ただし、設定の名前や標準値はソフトごとにちがいます。
前のソフトと同じ数字を入れても、まったく同じ結果になるとは限りません。
スライサーを変えたときは、まず標準設定で小さなものを印刷し、問題がないか確認しましょう。
はじめてスライサーを使うときの流れ
はじめて使う場合は、次の順番で進めるとわかりやすいです。
- 使用する3Dプリンターを登録する
- ノズルや材料を選ぶ
- 3Dモデルを読みこむ
- 大きさと向きを確認する
- 標準の印刷設定を選ぶ
- 必要に応じてサポートを付ける
- スライスする
- プレビューを確認する
- 印刷時間と材料の量を確認する
- プリンターへデータを送る
最初から、積層ピッチ、速度、温度などをすべて変える必要はありません。
メーカーやスライサーが用意した標準設定を使い、気になるところがあった場合だけ、少しずつ調整していきましょう。
一度に多くの設定を変えると、
「何を変えたせいで失敗したのかわからない!」
となります😇
まとめ:スライサーは3Dプリントに欠かせないソフト
スライサーとは、3Dモデルを3Dプリンターで印刷できるデータへ変えるソフトです。
おもな役目をまとめると、
- 3Dモデルをうすい層へ分ける
- プリンターの動きを計算する
- 積層ピッチやインフィルを設定する
- 外壁や上下面の厚さを決める
- サポートを作る
- 温度や印刷速度を決める
- 印刷前に動きを確認する
- 印刷時間や材料の量を計算する
- プリンターに合った形式でデータを出す
というものです。
スライサーは、3Dプリンターの印刷品質や使いやすさに大きく関わります。
ただし、初心者が最初からすべての機能を覚える必要はありません。
まずは、
メーカーが案内しているソフトで、標準設定を使う
ところから始めましょう。
慣れてきたら、作りたいものや使っているプリンターに合わせて、別のスライサーや細かな設定も試してみてください😊
最後に
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
スライサーは、3Dモデルと3Dプリンターをつなぐ、印刷に欠かせないソフトです。
ソフトによって、使いやすさ、対応機種、サポートの付け方、プリンターとの連携などが変わります。
まずは使っている3Dプリンターの公式ページや説明書を確認し、案内されているスライサーから使ってみてください!
このサイトでは、3Dプリンターの設定や専門用語について、初心者向けにわかりやすく紹介しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!🙌✨
